<創造性を育むICT教育 千葉中学 山本恭輔君>
創造性は誰もが持っている
まず、「みなさんは、創造性を持っていますか?」という問いでプレゼンは幕を開けた。
実際に、この質問に対して、多くの人は、自分は持っていない、と回答する。
しかし、創造性は、誰もが生まれつき持っているものである。
Not Special 創造性は、特別なものではない。
ひとの存在価値は、創造性にある
「半導体の集積密度は18~24ヶ月で倍増する」というムーアの法則に従って、コンピュータは、すさまじいスピードで発展を遂げている。
ただ、それだけコンピュータが発展しても、人間が特有に持っているのが創造性である。
しかし、現在の教育では、まだまだ創造性を育むことが難しいと山本君は問題提起する。
では、創造性を育む教育をどのように創り上げていけばいいか。
ICT教育は、その大きなソリューションになる。
日本の学生のICTの現状を表すデータとして、OECDの調査を引用した。
それによると、学びにおいて、日本の学生がPCを用いている割合は、他国に比べて圧倒的に低い。日本の学生が他国の学生よりも上回っているのは、メールの処理への時間のみであった。
ICT教育は、創造性を育む大きなソリューションになるが、あくまで目的ではなく、ツールであることを忘れてはならない。
創造性を育む3つのプロセス
では、目的である創造性を育むためには、何をしたらいいか。
以下の3つのプロセスをとると、創造性が育まれる。
1:情報の取捨選択
2:思考し、付加価値を与え、考えを深める
3:発信して共有
牛乳パックを積み上げて作った船
山本君は、11歳の時に、牛乳パックを見ていて、2Dから3Dに換えたら、面白いのではないかと思い、半年間かけて、牛乳パックを積み上げ、牛乳丸という船をつくった。
これは、自分の中で創造性を育む学びであったと思ったが、こういったアンテナにひっかかることは、半年に一度くらいで頻繁に起こるものではない。
ICTと創造性
創造性を育む1stステップとして「情報の取捨選択」をあげたが、山本君が半年かかったように、教育現場で学生が情報収集することは効率が悪い。その効率改善のために、ICTがソリューションになる。ICTによって、情報を大量に収集し、そこから取捨選択する。
2ndステップ「付加価値を加える」プロセスにおいては、ICT教育の作業効率によって、Try&Errorが行いやすくなり、付加価値を加える作業回数が増える。作業回数が増えることで、創造性が生まれやすくなる。
3rdステップ「情報発信、共有」のプロセスにおいても、ICTによって情報発信コストの削減と共有の幅の拡大ができる。プレゼンの際に、B紙やレポートをアナログで作成するよりも、PowerpointやKeynoteを用いた方が効率が良くなり、情報発信の手助けにもなる。また、SNSの活用によって、自分の考えをたくさんの人と共有する事が出来る。情報発信によって、自分の考えが整理され、また、他の人との考えと組み合わせることで、さらに新たな創造性を育むことができる。
山本君が通う千葉県立千葉中学校では、学生たちが「ゼミ」という時間を持ち、自分の関心のあるテーマについて研究し、発表を行っている。このゼミの時間で、山本君は、「ICT教育」について研究し、IT医療で最先端を走る杉本先生と出会うきっかけになった。
また、「TED×Osaka」、「EDU×Life is Tech」のイベントでのスピーチがYoutubeにアップされて、現在、4000回を超える再生回数となっており、国技館の観客数と同じくらいの人に見てもらっている。SNSは、それだけ、簡単に多くの人に自分の思いを伝えることができる。Facebookなどを用いて、感じた事を出来る限りシェアしている。
感想
今回、山本君がシェアしてくれた創造性を育む3つのプロセスは、学生に限らず、すべての人に通じる普遍的なものだと思う。シンプルで分かりやすく、自分も創造性をこれから育んで行く上で、すごく参考になった。
彼のプレゼンテーションは、TEDで見たことがあるが、抽象度を高めて、シンプルに分かりやすく説明することが卓越していると感じた。今回は、生で聴いて、内容面での分かりやすさだけでなく、堂々と自分の考えを発信している姿に刺激を受けた。
ICTは目的ではなくツールである。
山本君のプレゼンテーションの中にこんな言葉があった。
軸となる考えがあって、そのプロセスの効率と効果を高めるということは、小池先生の講演でもあった。ICT教育を考えていくうえでは、ツールを上手く使うこと以上に軸となるコンテンツがどれだけしっかりしているか、が重要だということを今回のセミナーでは一番学んだ。
MH 名古屋大学